ハワイ王国で女性初の女王でありながら、ハワイ王国の最後の王様となったリリウオカラニ女王
多くの曲を残していますが、よく知られている曲は「Aloha 'Oe(アロハ オエ)」ではないでしょうか。
この曲にどのような思い、背景があったのか見ていきましょう。
Aloha 'Oe(ハワイ語&和訳)
Haʻaheo e ka ua i nā pali
崖のそばで雨を誇らしげに払いのけ
Ke nihi aʻela i ka nahele
木々の間を滑り抜け
E hahai (uhai) ana paha i ka liko
今もなお蕾を追っている
Pua ʻāhihi lehua o uka
高地のアーヒヒ・レフア
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< Hui >
Aloha ʻoe, aloha ʻoe
さようなら あなた さようなら あなた
E ke onaona noho i ka lipo
木陰に住む魅力的な人
One fond embrace
愛情のこもった抱擁を
A hoʻi aʻe au
私が去る前に
Until we meet again
また会う日まで
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ʻO ka haliʻa aloha i hiki mai
甘い思い出が蘇り
Ke hone aʻe nei i kuʻu manawa
過去の新鮮な思い出をもたらす
ʻO ʻoe nō kuʻu ipo aloha
最愛の人 あなたは私のもの
A loko e hana nei
あなたから真実の愛は決して離れることはありません
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Maopopo kuʻu ʻike i ka nani
私はあなたの愛らしさを見守ってきました
Nā pua rose o Maunawili
マウナウィリの甘いバラ
I laila hiaʻai nā manu
そこには愛の鳥が住み
Mikiʻala i ka nani o ka liko
あなたから蜜をすすります
Aloha 'Oeの歴史・背景
歌詞をご覧になっていかがでしたか。
愛しい人への思いを綴ったように感じられ、どのような背景から生まれたのか気になりますね。
作曲されたのは1877年頃
1877年、リリウオカラニ女王はカラーカウア王から王位継承者として任命され、次期王としての自覚を持ち、オアフ島を巡視していた時に作られたようです。
オアフ島東海岸エリアのマウナウィリの巡視を終え、お付きの方がホノルルに戻るための準備をしている時に、たまたまリリウオカラニ女王は恋人の別れのシーンを目にしたことでこの歌が生まれたようです。
ホノルルに戻る時には、一行で口ずさんでいたとか。その後、ワシントン・プレイスに戻り、曲を完成させたようです。

リリウオカラニ女王がイオラニ宮殿に幽閉されたのは1895年なので、そこから18年程前に曲はできていましたが、幽閉されている時に楽譜に書き写し、のちにそれが販売されて有名となり、多くの人が知ることになったので、幽閉中に作られたと言われるのかもしれません。
「1883年の夏頃には、サンフランシスコでロイヤル・ハワイアン・バンドによって演奏され、大人気となった」
保管されているリリウオカラニ女王の手書きによる原稿に上記の内容が記載されており、幽閉の12年程前にはアメリカでこの曲を耳にした人がいるということになります。
恋人にも諸説あり
その「恋人の別れのシーン」にはいろいろなお話があります。
・恋人同士が別れ際にレイを渡していた
・リリウオカラニ女王などから信頼を得ている人物が、恋人と思しき人からレイをもらっていた
・リリウオカラニ女王などから信頼を得ている人物が、リリウオカラニ女王の妹リケリケ王女との別れの抱擁をしていた
真相は定かではありませんが、3つ目に登場している妹のリケリケ王女はすでに結婚している身だったので、もしかすると道ならぬ恋だったのかもしれません。
いずれにしても恋人との別れ、今日のようにスマートフォンもなく、連絡手段が限られている時代ですから、愛情のこもった抱擁になることは必然ですね。

リリウオカラニ女王が幽閉時に作られたとされる説や、その時に楽譜に書き写した背景から、転覆したハワイ王国、奪われていくハワイの土地などへの思いを綴った曲とされることもあります。
Mana's Japanese translation -Manaによる和訳ー
ここからはハワイ語勉強中の Mana が、独自の訳を展開します。
ハワイ語の意味とインスピレーションで和訳していきます。
Manaオリジナル和訳
Haʻaheo e ka ua i nā pali
崖に降る雨は気高く
Ke nihi aʻela i ka nahele
森の傾斜に沿って流れていく
E hahai (uhai) ana paha i ka liko
つぼみを求めて
Pua ʻāhihi lehua o uka
高地に咲くアーヒヒ・レフアの
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< Hui >
Aloha ʻoe, aloha ʻoe
さようなら あなた さようなら あなた
E ke onaona noho i ka lipo
森の中にはあなたの香りがいつも漂い
One fond embrace
それは愛に溢れた抱擁のよう
A hoʻi aʻe au
私は行きます
Until we meet again
またあなたと会えるその時まで
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ʻO ka haliʻa aloha i hiki mai
突然蘇る愛にあふれた記憶
Ke hone aʻe nei i kuʻu manawa
あなたと過ごした大切な時間が頭の中に巡る
ʻO ʻoe nō kuʻu ipo aloha
あなたは私の最愛の人
A loko e hana nei
私の心の中にはいつもあなたがいる
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Maopopo kuʻu ʻike i ka nani
その美しさは私の目に焼き付いた
Nā pua rose o Maunawili
マウナウィリのバラ
I laila hiaʻai nā manu
そこでは鳥たちが甘い香りと蜜に誘われて
Mikiʻala i ka nani o ka liko
あなたの周りを飛び回っています
単語の上にはその単語が表す意味を記載しています。
複数回使われている単語については2回目以降、および文法的な役割をする言葉については訳を割愛しています。
Manaオリジナル和訳の解説
この曲はリリウオカラニ女王が目にした恋人たちの別れのシーンから生まれたものなので、恋人に対しての思いが歌われているように見えますが、その裏にはハワイを愛するリリウオカラニ女王のその土地に根付く自然に対する思いが込められていると感じました。
曲中に登場する自然
・雨(ua)
・崖(pali)
・森林(nahele)
・アーヒヒレフア(ʻāhihi lehua)
・バラ(rose)
・鳥(manu)
雨、崖、森林はハワイの独特の形を作る大切なものであり、ハワイアンは元々土地に対する敬愛が大きく、感謝の気持ちが込められています。
特に「アーヒヒレフア」はハワイの中でもオアフ島のみに分布しており、国際自然保護連合では絶滅危惧種に指定されています。
生息するのは、マウナウィリの近くとなるヌウアヌ地域の険しい斜面。
1番に歌われる雨が求めて流れていったのは、アーヒヒレフアに命である水を届けるためかもしれませんね。
そしてマウナウィリのバラは歌詞では「rose」と英語のローズの表記ですが、この曲では「ロゼ」と発音しています。
ハワイ語では使わないアルファベットがあり、「R」「S」もその仲間で「R」→「L」、「S」→「K」に置き換えられます。
ハワイアンソングの中ではしばしば英語の表記をそのまま使ってローマ字読みをすることがあり、今回の「rose」もそうですが、家を意味する英語の「home」は「ホメ」と読みます。
ちなみにバラはハワイ語では「lokelani」と表記し「ロケラニ」と読みます。
「manu」はどの鳥かを表すわけではなく、「鳥」という大分類の表現です。
すずめ、鳩といった1種類を表していないため、バラの周りにはその甘い香りや蜜を求めて、いろいろな種類の鳥が飛び回っているという情景が浮かびます。
これらのことからハワイという土地の恩恵を受けて生まれたもの、その土地ごとに育まれる自然、巡視中も含めてその土地でしか出会えないものに対して、そこにしかない生命、香り、色などのエネルギーを感じ、感銘を受けたこと、感じたこと、そしてまたこの土地に戻ってくるその日までこの環境が守られますようにという思いが込められていると思いました。
さいごに
こちらではハワイ王国第8代 リリウオカラニ女王が作られた「Aloha 'Oe」の歌詞、制作の背景、ハワイ語の意味やManaのオリジナル和訳の解説をしました。
もしもこの曲でフラを踊られる際は、リリウオカラニ女王が見たハワイの景色、情景を思い浮かべながらハワイとの繋がりを感じてください。
さらに、ご自身で和訳してみると勉強にもなりますし、踊りにもより気持ちが込められますので、時間があればチャレンジしてみてくださいね。
リリウオカラニ女王について詳しく
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