ハワイアンソングとして有名な「ʻĀinahau」ですが、カイウラニ王女の邸宅としても有名です。
そしてこの曲の作者は、カイウラニ王女の母であるリケリケ王女です。
それではこの曲にどのような思い、背景があったのか見ていきましょう。
私Manaのオリジナル和訳と解説もありますので、そちらも合わせてご覧ください。
‘Āinahau(ハワイ語&和訳)
Na ka wai lūkini,wai anuhea o ka rose
それは上品な香水、バラの香りはとても甘く
E hoʻopē nei i ka liko o nā pua
開花する植物の若葉たち
Nā ka manu pīkake,manu hulu melemele
孔雀そして黄色い羽の鳥
Nā kāhiko ia o kuʻu home
私の家の装飾品
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< Hui >
Nani wale ku❛u home ʻo ʻĀinahau i ka ʻiu
美しい私の家アイナハウはとても高貴だ
I ka holunape a ka lau o ka niu
ココヤシの葉っぱが揺れる
I ka uluwehiwehi i ke ʻala o nā pua
美しい森に花の香り
Kuʻu home, kuʻu home i ka ʻiuʻiu
私の家、私の家はとても荘厳
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Na ka makani aheahe i pā mai ma kai
そよ風が吹いている 海から
I lawe mai i ke onaona līpoa
それが甘いものをもたらす 海藻の香り
E hoʻoipo hoʻonipo me ke ʻala kuʻu home
我が家の愛の香りと混ざり合う
Kuʻu home, kuʻu home i ka ʻiuʻiu
我が家、私の家は高貴
ʻĀina hauの歴史・背景
歌詞をご覧になっていかがでしたか。
自分たちの家「アイナハウ」を本当に心地よい場所、立地の良さ、たくさんの植物や鳥たちが庭園を鮮やかに彩り、花の良い香りが充満する大好きな家と感じます。
作者は誰?作曲された時期はいつ?
作者はカイウラニ王女の母親であるミリアム・リケリケ王女です。
「アイナハウ」が建設された土地は、カイウラニ王女がキリスト教の洗礼を受けた時に、カメハメハ4世、5世の異母姉であるルース・ケエリコーラニ王女からいただいた贈り物です。
カイウラニ王女が1875年12月に洗礼を受け、3歳の頃には「アイナハウ」に住んでいたようなので、1880年頃には作曲されていたのかもしれません。
「アイナハウ」の名前の由来
ルース王女からいただいたその場所は、現在はシェラトン・プリンセス・カイウラニ・ワイキキビーチホテルがある場所の辺り。マノア渓谷から吹き降ろす風がさわやかで涼しく、カイウラニ王女の母親であるリケリケ王女がハワイ語で「涼しい土地」を意味する「ʻĀinahau」と名付けました。
ʻĀina(アーイナ)は「土地」、hau(ハウ)は「涼しい」という意味のハワイ語です。
ちなみにシェラトン・プリンセス・カイウラニ・ワイキキビーチホテルのホームページを見ると、ホテルが建っているのは「アイナハウ」の入口に当たる場所だそうです。同ホテルには「アイナハウタワー」があり、ホテル全体でカイウラニ王女を讃えています。
アイナハウにはなぜ植物がたくさんあったのか
カイウラニ王女の父親であるアーチボルド・スコット・クレグホーン氏は、園芸がとても大好きだったそうです。
広大な土地には様々な植物が植えられ、クレッグホーン氏の妻であるリケリケ王女が好きな花を植えたり、一年中何かしらの花が咲いている状態だったとか。
そこにはバラの花もあり、その気品あふれる香りが広がっていたことが1番の「Na ka wai lūkini,wai anuhea o ka rose」から想像できますね。
アイナハウはビーチにも近い好立地
アイナハウの入口付近に建てられたシェラトン・プリンセス・カイウラニ・ワイキキビーチホテルをご覧いただくとわかりますが、カラカウア通りをはさんですぐそこがワイキキビーチです。
ビーチの方から吹いてくる海風に海藻の香りが乗せられ、アイナハウには花々の香りと海藻の香りが漂います。2番全体でその事が歌われています。
マノア渓谷から吹く涼しい風、花や海藻の香り、美しい花々や色鮮やかな鳥の羽、それら全てがアイナハウを彩っていたことでしょう。その事が1番の「Nā kāhiko ia o kuʻu home」で表現されています。
Mana's Japanese translation - Manaによる和訳 -
ここからはハワイ語勉強中の Mana が、独自の訳を展開します。
ハワイ語の意味とインスピレーションで和訳していきます。
Manaオリジナル和訳 - ʻĀinahau -
Nā ka wai lūkini, wai anuhea o ka rose
ローズの甘い、レモンの香りが川にも染み込み、まるで香水のように漂う
E hoʻopē nei i ka liko o nā pua
花々の甘い香りが一面に広がっている
Nā ka manu pīkake manu hulu melemele
孔雀や黄色い羽根の鳥たちが
Nā kāhiko ia o kuʻu home
私の家を華やかにしてくれる
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< Hui >
Nani wale kuʻu home ʻo ʻĀinahau i ka ʻiu
気品あふれる私の家「アイナハウ」はとても美しい
I ka holunape a ka lau o ka niu
ヤシの木の葉が揺れる
I ka uluwehiwehi i ke ʻala o nā pua
花々の良い香りが草木が生い茂る庭園に充満している
Ku❛u home, ku❛u home i ka ʻiuʻiu
私の大切な家、気品あふれる神聖な私の家
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Na ka makani aheahe i pā mai ma kai
海から吹いてくるとてもやさしい風
I lawe mai i ke onaona līpoa
海藻のいい香りを運んでくる
E hoʻoipo hoʻonipo me ke ʻala kuʻu home
風と香りが私の家をやさしく包む
Kuʻu home, kuʻu home i ka ʻiuʻiu
私の大切な家、気品あふれる神聖な私の家
単語の上にはその単語が表す意味を記載しています。
複数回使われている単語については2回目以降、および文法的な役割をする言葉については訳を割愛しています。
Manaオリジナル和訳の解説
アイナハウには、山側から吹き降ろす涼しい風が吹き、暑いハワイでは過ごしやすい場所。
そしてカイウラニ王女の父であるアーチボルド氏が植えたたくさんの植物が豊かな自然を作り、良い香りを放ち、その香りがアイナハウ全体を包んでいたように感じられます。そこはまるで植物園。そんな印象を受けます。
さらに羽を広げれば美しい孔雀や黄色の羽を持つ鳥など、ハワイらしいカラフルな鳥がたくさんいて、その鮮やかな彩りでアイナハウを飾ったことでしょう。
ハワイの自然が常に目、鼻、耳に働きかけ、その空気感はとてもやさしく、そこに住む人々を包み込んでくれる場所こそクレグホーン一家が愛したアイナハウであると感じました。
曲中に登場する自然
・バラ(rose:ロゼ)
・若葉(liko:リコ)
・花(pua:プア)
・鳥(manu:マヌ)
・孔雀(pīkake:ピーカケ)
・風(makani:マカニ)
・海側(makai:マカイ)
・海藻(līpoa:リーポア)
・葉っぱ(lau:ラウ)
・ヤシの木(niu:ニウ)
アイナハウにはたくさんの植物が植えられていましたが、曲中には個々の花の名前は出てきません。ハイビスカス、ジャスミン、クチナシなど、多種類の花がアイナハウにはありました。アーチボルド氏が選んだハイビスカスは10種類以上あったとか…。多くの花がありすぎて、個々の名前を入れられなかったのかもしれません。
せっかくハイビスカス、ジャスミン、クチナシの名前が出たので、それぞれのハワイ語をご紹介します。
ハイビスカス ⇒ アロアロ(aloalo)
ジャスミン ⇒ ピーカケ(pīkake)
クチナシ ⇒ キエレ(kiele)
♪ 1番 ♪ 「ピーカケ」はカイウラニ王女と縁が深い言葉
「ピーカケ(pīkake)」は「孔雀」という意味を持ち、英語の「peacock」が由来のハワイ語です。
そして、花のジャスミンもハワイ語では「ピーカケ(pīkake)」です。なぜ、鳥と花が同じ言葉で表されるのでしょうか。
それは「孔雀」も「ジャスミン」もカイウラニ王女が愛したものだったからです。
アイナハウには孔雀が飼われており、またチャイニーズジャスミンが咲き誇っていました。カイウラニ王女のお気に入りであるこの2つに敬意を表し、同じハワイ語で呼ぶことにしたのが、ジャスミンを意味する「ピーカケ」の由縁です。
ハワイアンの王族に対する尊敬、敬意、愛の深さを感じます。
♪ 1番 ♪ バラに注目
ハワイアンソングの中に英語の単語が出てくることは珍しいことではありません。
1番の最初に「rose」とあり、英語のローズの表記ですが発音は「ローズ」ではなく、「ロゼ」とローマ字読みをするハワイ語の発音になります。
バラのハワイ語は「lokelani」と表記し「ロケラニ」と読みますが、小ぶりで濃いピンク色のバラを表すようで、意図的に「rose」と「lokelani」の使い分けがされているのかもしれません。その点に関してはまたわかったら追記します。
アイナハウの敷地内には養魚池があり、その事から小川のような水の流れる道があったのではないかと想像し、最初の「Nā ka wai」を「川」と訳しました。
そしてバラの種類によっては甘く、レモンのような香りがするものがあるので、その香りが辺り一面に充満して、そこを流れる小川にも香りが移ったとイメージしました。
♪ 1番 ♪ 「manu:マヌ」は大分類で表現
「manu:マヌ」はどの鳥かを表すわけではなく、「鳥」という大分類の表現です。例えるなら、遠くに鳥を見つけたけどカラスなのか、ハトなのか鳥の種類がわからない時などに「あ、鳥だ」という言い方をしますね。このようにざっくり鳥を表現する時に使うのが「manu」です。
「Nā ka manu pīkake,manu hulu melemele」という一文の中に2回「manu」が出てきますが、この曲では「ピーカケ」が孔雀であることがわかりやすく表現されており、「manu」とセットになっています。
その次の「manu」は「黄色い羽根の鳥」という意味になり、羽が黄色い鳥であることはわかりますが、どの種類の鳥なのかということまではわかりません。
花がたくさんあるので、花の蜜を餌としているハワイミツスイなどが飛び回っていたのかもしれませんね。
♪ Hui ♪ 単なる家ではないと感じる言葉のチョイス
Huiの最初「Nani wale kuʻu home ʻo ʻĀinahau i ka ʻiu」に出てくる「ʻiu:イウ」は、「高尚な」「神聖な」という意味があります。
そしてHuiの最後には「kuʻu home i ka ʻiuʻiu」と「ʻiu」を繰り返し、その意味をより強くし「威厳のある」「高貴な」という意味合いになり、単に住む家に対する思いとは異なるものを感じます。
建物や周りに咲き誇る植物たちが素晴らしいこともありますが、それだけではなく、ハワイ王国の将来の王様となるカイウラニ王女が住む家だからこそ、家というよりも「宮殿」を想像するような言葉が選ばれているように感じます。
♪ 2番 ♪ ハワイの海がやさしくアイナハウを包みこむ
海からとてもやさしい風が吹いてきて、その風が海藻のいい香りも運んできてくれます。その香りがアイナハウをやさしく愛でるように包んでくれるとイメージしました。
ポイントは2番の1行目の「aheahe i pā mai」の「pā」と、3行目の「E hoʻoipo hoʻonipo」の「hoʻoipo」と「hoʻonipo」です。
「pā」にはいろいろな意味がありますが、ここでは体感することを表していると思いました。見る、触れる、聞くなどの実際の感覚で、「風がやさしく自分の肌に触れる」と読み解いています。
そして「hoʻoipo」と「hoʻonipo」、「愛撫する」と「求愛する」ですが、この言葉からどのようなことが想像できますか?
すごく大切にしていて、すごく愛している、その2つが重なっていたら、ものすごくやさしく包み込んでくれるのではないかと解釈しました。
♪ 全体 ♪ もしかするとアイナハウはカイウラニ王女のこと?!
ハワイアンソングには「kaona:カオナ」という隠された意味、表向きにはわからない裏の意味があることがあります。
アイナハウのカオナは、アイナハウの建物自体がカイウラニ王女を表し、1番の香り、植物、鳥などは装飾品なので王女を飾る香水、洋服、カヒリを表し、2番の海からのやさしい風は母リケリケ王女、Huiはカイウラニ王女の成長を表現しているのではないかと思いました。
リケリケ王女が美しいアイナハウを美しいカイウラニ王女に見立て、王族としてきらびやかな物を身に纏い、国民に尊敬されながらも慕われていくことを願い、大きな母の愛でやさしく包んでいこうという気持ちが込めらているのではないでしょうか。
まとめ
カラカウア王、リリウオカラニ女王の兄弟であるリケリケ王女が作った「ʻĀinahau」の歌詞、制作の背景、ハワイ語の意味やManaのオリジナル和訳の解説をしました。
リケリケ王女が作られた曲であるため、カイウラニ王女についてはあまり触れませんでしたが、カイウラニ王女もアイナハウが大好きでした。リケリケ王女の大きな愛に包まれていたからかもしれません。
もしもこの曲でフラを踊られる際は、実際にバラの香りを嗅いでみたり、花々や鳥たちを眺めたりしてみると想像しやすく、踊りにより一層表情が出るかもしれません。ぜひ、花や鳥で鮮やかに彩られ、花の良い香りやわらかい風に包まれている「ʻĀinahau」を思い浮かべてみましょう。
さらに、ご自身で和訳してみると勉強にもなりますし、踊りにもより気持ちが込められますので、時間があればチャレンジしてみてくださいね。
参考文献
著者:Sharon Linnea
出版社:Eerdmans Books for Young Readers
ハワイ語の発音・読み方について
カイウラニ王女について詳しく
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